文字通りの“エフェクト”効果を与えるのではなく、むしろ“透明な音”であってほしい。ペダルはサウンドの軸であるギターとアンプの音を優しく支えるためにこそ存在するのである。
インタビュー&文|下総淳哉 Junya Shimofusa
ギター・サウンドを全く別の色に染め上げるのではなく、元の色を生かしつつ、そっと補正する。決して派手な効果が得られるわけではないが、一度その魅力に目覚めると、なくてはならないものになってしまうディヴァイス。それがブースターである。特にアンプ・サウンドを基本にしている人にとって、その善し悪しは生命線。原音に忠実であってほしいが、耳障りな部分まで増幅されてしまっては困る。アンプからドライヴ感を引き出してほしいが、変なクセは付けられたくない……。そんなシビアな要求に応える製品として人気を集めているのが、xoticのブースター・シリーズである。音にこだわりが強い人ほど、高い評価を与える同ブランドの製品。果たして、そこには一体どんな謎が隠されているのであろうか?
----Xoticはベースの工房として知られていましたが、近年になって本格的にエフェクターの製作を始めましたよね。何かきっかけがあったのでしょうか?
xotic effects(以下XE):以前から“Robotalk”や“Tri-logic
Bass Preamp”といったモデルを発表してはいたのですが、地元LAのプロ・ギタリストたちからのニーズに応えるべく、本格的な開発チームを立ち上げたのです。
----それをまず形にしたものとして、“AC-Booster”を出した、と。これはどういうコンセプトで開発されたモデルなのでしょうか?
XE:当時、エフェクターと呼ばれるものは、文字通り、音に明確な効果を与えることが求められていました。しかし、我々はもっとピュアなもの……“透明な音”の追求にこだわったのです。音の軸になるギターやアンプの持つ個性を壊さず、それを補う役割を持たせようと考えました。
----“透明な音”……なるほど、そんな感じですね。そして、それはその後発表された
"RC-Booster"からもしっかり感じ取ることができます。
XE:おかげさまで、“AC-Booster”は発表後に大きな反響を呼び、それによって多くの
ミュージシャンとの交流が生まれました。 そうした中から、今度はよりクリーンなブースターが欲しいという要望を得て、それが“RC-Booster”の誕生に繋がったのです。透明なトーンを持つ“AC-Booster”の基本的デザインを継承しつつ、使いやすく明瞭なクリーン・ブースターを意識して開発したモデル、それが“RC-Booster”です。
----とはいえ、“RC-Booster”は入力された信号を単純にブーストするだけのものではな
いですよね?
XE:これは初期ジェフ・べックやエリック・ジョンソンに共通する音作りの方法に近いのですが、彼らは、ギターのトーンを下げてアンプのトレブルを上げるんです。そうすることで音がより太くなる。それと同じで、“RC-Booster”はギターとアンプの橋渡しとして絶妙な調和を取るようデザインしました。
----オーヴァードライヴ・ペダルを開発するにあたっては、中域の扱いがポイントになると思います。特に“AC-Booster”では、その部分の音決めをするのがポイントだったのではないでしょうか?
XE:確かに、この中域というのが多くのペダルが“ペダルっぽく聴こえてしまう”理由の1つなんです。なので、まず開発にあたっては、ブラックフェイス期のフェンダー、VOX、ダンブルといった名機アンプが持つ“艶のあるサステイン”を念頭に置き、スムースで自然なコンプレッションを追求しました。つまり、ペダルがアンプの一部となり得るか、それが開発の基本姿勢だったのです。
----トーンをBassとTrebleの2ノブで構成してあるのもそうした理由からなんでしょうか?
XE:サウンドをデザインする上で、中域という部分は、あまりいじりたくない場所なんです。 それは、ギターの特質、ギター自体の性質が中域に多くあるからなんです。
だったら、中域には手を付けずそれ以外の部分を補正できるようにすればいいんじゃないか、というのが狙いでした。
----“AC-Booster”、“RC-Booster”の後、“BB-Preamp”が発表されています。シリーズの中でも最もサウンドメイクの幅が広い“BB-Preamp”を開発することになったきっかけは?
XE:“AC-Booster”発表当時、Scott
Henderson(スコット・ヘンダーソン)からリクエストがあったのです。“AC-Booster”はハムバッカーとの相性は最高だけど、それをもっとシングルコイルに合うようにアレンジできないか?と。その要望を実現すべく開発を進めていたのですが、彼が満足するものを完成させるまで3年掛かりました。
----3年……ですか。“AC-Booster”や“RC-Booster”も同じぐらい掛かったんですか?
XE:“BB-Preamp”は3年掛かりましたが、“AC-Booster”と“RC-Booster”は1年半くらいですね。
----それぞれ開発にあたって最も注意を払った点はどこでしょう?
XE:音の速さ、 張り、順応性です。
----そうした部分を実現するには、スイッチ、ケースといった素材も重要になりますよね?
XE:実は抵抗のリード部分などによっても音は変わるものなんです。ですから、耐久性や、音質管理には細心の注意を払っています。
----ケースに関しては、どうでしょう。敢えてこの素材にこだわったような気がします。
XE:その通りです。 ケースの材質によって音質が変わることはあまり知られていませんが、このダイキャストの箱も音の一部なのです。
----では、各モデルに関して、お勧めのセッティング例があれば教えてください。
XE:交流があるアーティストのセッティングを紹介しましょうか。まずはエリック・ジョンソンですが、“AC-Booster”のセッティングが[Gain:10時、
Volume:8時、Treble:11時 、Bass:2時]で、アンプはマーシャル“JMP 50ワットPlexi”です。スコット・ヘンダーソン
は、“BB-Preamp”が[ Gain:2時、Volume:2時、Treble:11時、Bass:2時]、“RC-Booster”が[Gain:2時、Volume:2時、Treble:12時、Bass:11時]で、アンプがマーシャル“JMP
100ワット”もしくはSuhrの“OD100”です。
----なるほど、参考になります。上手に使いこなすためのコツがあれば、それも聞きたいのですが?
XE:そうですね……、同時に2台を組み合わせて使うという方法があります。“AC-Booster”、“RC-Booster”、“BB-Preamp”とも異なるキャラクターを持っていますが、組み合わせ次第で、統一性をもたせながら簡単に良い音を作ることができるのです。
例えば、基本になる歪みを“BB-Preamp”で作ったとして、その前に“AC-Booster”を繋いでゲインを少なめにセットします。そして、ソロを弾く時などに“AC-Booster”を“BB-Preamp”に足すのです。そうすれば、他の楽器のサウンドに埋もれることのない太い音が得られるはずですよ。
----それでは最後に、今後開発しようと考えている製品があれば、明かせる範囲で教えてください。
XE:今後の予定は未定です。が、いつもインスパイアされる環境作りを心がけていますので、突然何か新しいものが開発される可能性はありますね(笑)。