VELVET SOUND
静岡県静岡市

林店長

外から見ると倉庫の様なところで、まさかこれだけの機材とスタジオのある楽器店には見えませんでした。とにかく広いスペースで、豊富な品揃いの楽器や機材をとことん納得いくまで試すことができます。東京や大阪から遠方のお客さんがなぜここまで来られるのかは、中へ入れば納得です。それに加えて、林さんの楽しいお話と音楽や楽器に対する思い入れに触れることができれば、何度も何度も訪れたくなるのは無理もありません。

PCI:たいへん広いスペースと品揃えでビックリしました。店を出されたのはいつですか?

林:ここの場所に来てからは7年程になりますが、店をそもそもやり始めたのは16年以上も前なんです。 

外から見ると倉庫で中央の看板が目印。1階がスタジオで2階が楽器店

PCI:どうして楽器屋を静岡で開くことになったんでしょうか?

林:当時、音響エンジニアの仕事をしていたのですが、ちょっとしたきっかけで静岡に戻ってきて、そこで偶然な出会いから地元でエンジニアの仕事を頼まれるようになって、それがあっという間に順調に行ったのは良かったのですが、数年たって気がつくと忙しすぎて、ふと気がついたら音楽やってないなぁーと思っていました。そんな時たまたま知り合いの楽器屋さんで、自分の店を売りたがっている人がいたんです。試しに聞いてみると、すごい安い金額を言うんですよ。売るって言っても貸店舗だから在庫だけなんですけれどね。しかも、"仕入れのルートは自分が持っているから自分を通して仕入れればいいから”って言うんです。引退でもするのかなと思ってその話にたままた乗っちゃったんですよ。それで上手く乗ったと思ったら、実際は騙されちゃったんですね。(笑) 

PCI:そうですか? それが初めて開いた静岡の楽器店ですね? 

林:そうです。店を買った直後に、その人がすごい借金まみれで夜逃げしちゃったんです。それで僕が買ったその店には、在庫などの取り立てに色んな債権者が殺到したんです。(笑)気が付くと仕入れのルートも全然無い訳ですよ。目の前が真っ暗になりましたが、今更後戻りもすることも出来ず、とにかく無我夢中でがんばりました。

PCI:その時林さんは楽器業界についてはまったく知らなかったんですね?

林:まったくの素人でした。

PCI:それで仕入れとかどうされたんですか?

林:最初は自分の持っていた楽器を売ったり、友達が持っている楽器とかを借りて飾らせてもらったりしてました。(笑) それから古物商の認可も受けて、中古の楽器の売買などもやり始めました。食べて行けるかどうかギリギリの状態がしばらく続きましたね。(笑)

PCI:中古と言えば、その当時はビンテージ物の商売が盛んでしたよね?

林:そうですね。当時は安かったこともあってビンテージと意識しないで結構色んな物を集めていました。音楽やデザインが好きだったのでただ単純に“いい音するな”とか“デザインがいいな”っていう物を収集してたんです。

PCI:エフェクターとかですか?

林:最初はエフェクターが多かったですね。もともとデザインとかを考えるのが好きだったので、エレハモのエフェクターのヘンテコリンな形とかデザインが好きで結構集めていました。今もミュートロンとかエレハモの昔のやつとかはほぼ全部と言っていいほど持っていますよ。(笑) そして何故か当時からBossのOD-1だったら初期型のやつならいい音がしてとか、DS-1だったらあの頃のやつはどういう音だとか結構知ってたんですよ。 その当時は誰もそんなこと話題にしませんでした。 そういうちょっと偏った知識はあったんです。(笑)

PCI:その辺が林さんの店の特色だったのかもしれませんね。主力製品はギターとかエフェクターだったんですか?

林:80年代のその当時はシンセサイザー・ブームの終りで、僕はDX7のプログラミングとかそういうのは出来たんです。自分が曲を作る過程で必要だったので覚えていたんですね。お客さんにキーボードを売って、その後使い方を全部教えてあげていました。他にレコーディング機材については知識があったのでその辺も店の特徴になったのかもしれませんね。

PCI:その頃の楽器屋さんとしてはユニークな存在だったんでしょうね。

林:そうかもしれません。楽器屋というより音作りはこうやったらいいんじゃないの? というのを教えたり、お客さんと一緒に色々と実験したりする店という感じでした。 とにかく、自分で試してみないと納得できない性格なんですね。(笑)

PCI:それで順調に取り扱い商品も増えて行ったんですね?

林:いえ、なかなか順調には行きませんでした。(笑) もともと商人の出ではないので、まったくゼロからの出発でしたね。(笑) ただお金に関してはきっちりしていたんです。うちはもともと裕福な出じゃないので、親がとにかくお金に関しては子供の頃からうるさかったんです。僕も子供の頃から一日でも早く自活したいと思っていたんです。 ですから支払いとかはきっちりしないと気が済まないんですね。そこの部分が楽器メーカーの方々には信用になったみたいですね。物を送ってもらう前にお金はきっちり支払いは済んでいましたからね。そんなことを何年も地道に続けて行くうちに正式に取引が出来るようになって、今に至った訳です。

PCI:そして徐々に楽器にも興味を持たれる様になったんですね?

林:そうですね。そしてまだ値段が安い頃に、アメリカに友達もいたので個人的にギターやエフェクター等をどんどん買っていきました。そうこうしてるうちにかなり買った物が溜まってしまって、処分しようかなって思っていたら、「プレイヤー」さんから「小さな集合広告出すスペースあるけどやらない?」って言うお話を頂いたんです。それで売れるかどうか分らないけど、とにかく通販をやってみようと思ったんです。OD-1なんか50個くらい持ってましたから。その当時はOD-1と言ったらOD-1でしか無かったんですけど、初期型のこれは音がいいよという様なことを書いた広告を出してみたんです。その時にヴェルヴェット・サウンドという名前を通販用に使い始めた訳です。

PCI:プレイヤーの広告が最初だったんですね?

林:そうです。10年ともうちょっとくらい前の話ですね。試しに載せたら、ものすごく売れて全国にどっと出荷しました。

PCI:まだ通販がそれほど盛んではない頃ですよね?

林:そうですね。まだ通販が一般的になり始めの頃ですね。それをきっかけに店の名前もサウンド・ボックスからヴェルヴェット・サウンドという自分の中でずっとあたためていた名前に変えました。

PCI:通販で一番よく売れるのはエフェクターですか?

林:最初はエフェクターでしたね。今はギターやアンプなど色々な物が売れる様になりました。

PCI:エフェクターの次にアンプを取り扱う様になったんですね?

林:そうです。最初はエフェクターで色んな音が作れると思ったんですが、ところが色々扱っていくうちに、アンプこそが良い音を出すのにたいへん大切なファクターだと分ってきて、それから真空管アンプに興味を持ち始めたんです。

PCI:真空管の勉強もされたんですね?

林:マーシャルやフェンダーのビンテージアンプを買っていくうちに、アメリカの業者の人達とのやり取りで色々なことを勉強させられました。でもアンプの修理をちゃんと出来るテクニシャンが見つかるまでは販売を控えていました。全国色々探してやっと言った通りちゃんとアンプの修理が出来る腕のいいテクニシャンを見つけたので販売に踏み切ったんです。そしてアンプが見えてきたのでそれから楽器その物に興味を持つ様になったんです。

PCI:なんか、普通の楽器屋さんとはまったく順番が逆かもしれませんね。

林:そうですね。最初に音楽とレコーディング、そしてエフェクター、その次にアンプが来て最後にギターですから。(笑) 

PCI:ある意味ユーザーに近い所からアプローチされたのかもしれませんね。

林:そうですね。楽器屋の視点で“どうやったら売れるよ”っていう考え方からは少なくとも出発していません。

PCI:なるほど。それで16年経ってここまで立派な店にされました。現在の主力商売はなんでしょうか?

林:アンプとアコギとエレキが同じくらいのレベルで売れる状態が続いています。今年はアコギがちょっとだけ元気無くてアンプとエレキが強いですかね。その次にドラムとベースが来ます。

PCI:ドラムの品揃えも他の店に比べるとすごいですね。

林:スネアは最低でもいつも60台以上は置いていますよ。

PCI:それだけ多く揃えられる理由はなんでしょうか?

林:人から聞く話っていうのは以外に受け売りの事も多いんですよ。例えば「オールドのレスポールはすごくいいよ。」って言われても、僕は全然分んなかったんです。それで「何が、どういいの? 弾いたことあるの?」って聞くと、「弾いたことはないけど、あれはいいよ。いいに決まってるよ。」って多くの人が言うんです。私にはそういう話ってまったく信用出来ないんです。とにかく楽器っていうのは、基本的に自分が試してその人が自分でいいと思ったものがその人にとっていい物なんだというのが根本なんです。だからこそお店に選択肢が多いのは当たり前で、結果的にスネアもこれだけ揃える必要がある訳です。

PCI:60台以上というのはすごいですね。小物は如何ですか? パーツとか弦とかは?

林:これは話がちょっと遡りますが、店をやり始めた頃、店に何も特色が無いのが嫌で、何か特色を持ちたいと思っていました。でも本体物を仕入れるお金はもうとう無かったんです。それで一番最初にやったことは、まずは弦をとにかく色々な種類を置こうということです。その当時楽器屋へ行くとせいぜい30種類の弦しか置いてなかったんです。それでとりあえず100種類の弦を頑張って入れることにしました。それからパーツを置いてある楽器屋も無かったので大量に増やしました。それからケーブルも多くの種類を扱い、そういう小物で特色を出すことにしたんです。特に僕はレコーディングや音響のエンジニアから入っていますから、ケーブルで音が変わることは分っていました。残念ながらその当時にはそういう認識は楽器屋にはまだあまり無かったですね。見た目で太ければ“これはいいケーブルだ”って皆思っていましたから。(笑)その余韻で今も弦は140種類以上置いていますし、パーツだったら常に最低でも500種類以上在庫しています。

PCI:お店もホームページもとにかく品揃えはたいへん豊富ですね。エフェクターについてはどれくらい持っているんですか?

林:エフェクターは展示スペースの関係で倉庫にしまっていますが、ビンテージ物で1,500台以上はあると思います。

PCI:それはすごいですね。スタジオも経営されていますが、いくつスタジオはあるんですか?

林:今は4つあります。

PCI:駐車場も満杯で大盛況の様ですが、静岡にはスタジオは他にもたくさんあるんですか?

林:激戦区です。スタジオはたくさんあるんですよ。 

PCI:そんな中でこちらに来られるお客さんにはどういう人達が多いんでしょう?

林:皆さん社会人ですね。自分で稼いだ自分のお金で楽器を買って、自分のお金で趣味で音楽をやる人のための楽器屋にしたいと思っています。 

PCI:通販の商売もたいへん多いとのことですから、場所は静岡でなくてもいいかもしれませんね。

林:実際、お客さんで首都圏、大阪とか遠方の方も多いですね。 

PCI:お店の営業時間もユニークですよね。

林:店の営業時間は午後5時から11時までです。スタジオは夜12時過ぎまでやってますが。土、日の営業時間はお昼から夜11時までです。 

PCI:まさに遠方からのお客さん向けの営業時間ですね。PCIサイトの読者に向けてヴェルヴェット・サウンドさんのポリシー、セールスポイントなどをお聞かせください。

林:ポリシーはただ一つ。嘘を言いたくないので、受け売りの情報じゃなくて自分がまず試して自分が感じたことだけを自信を持ってお話ししたいと思います。自分が試していない物に関しては、うかつにあれがいいとか悪いとかは言いません。うちの従業員にも分らないことは分らないと言って欲しいといつも言っております。

PCI:ホームページもコンスタントに更新されてるんですか?

林:はい。必ず毎日どこかを更新しています。毎日更新する大切さを痛感しています。ヒット数にすぐ現れますから。大体毎日午前中はまるまるホームページの更新に時間を取られてしまいますね。

PCI:林さんの日記を楽しみにしている読者も多いんじゃないでしょうか。

林:本当ですか?(笑) とにかく僕は本音でしか話が出来ないので、人によっては嫌われてしまうかもしれませんね。(笑) ですから最近は出来るだけ私が前面に出ないで、お客さんの対応は出来るだけ若いスタッフに任せています。(笑) 私に出来る事はとにかく出来るだけたくさんの選択肢をお客様に提供する事です。色々な物を実際に試して頂き、ご自分が気に入った物を自分の納得のもとに選んでもらう様にしています。そして何か疑問や質問があった場合には、これまでの実体験から自信のあることだけをきちんと答えさせて頂くことにしています。 

PCI:たいへん良く分りました。今日は夜遅くまでありがとうございました。(9/17/2003) 

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