PCI:どういうタイトルのテレビ番組だったんですか?
とし:VIBEです。その名前で雑誌も出てるんです。今風の雑誌との提携の番組だったんで、ヒップホップ系のゲストが多かったですね。

PCI:そのお仕事はどのくらいやってたんですか?
とし:ワンシーズンですから、1年ぐらいですか。 

PCI:毎週行くんですか?
とし:いや、毎日です。月から金まで。

PCI:1回行くと何時間拘束されるんですか?
とし:半日は潰れますね。

PCI:結構ヘビーな仕事だったですね。 
とし:60、70年代のR&Bやヒップホップの曲っていうのは、僕はあまり聞かなかったジャンルなんです。ところがこっちに住んでる人たちは、そういう音楽聞いて育ってるじゃないですか。だから、「あのバンドのこの曲やるからね」ってパッと言われても最初は判んなかったんです。 だから、CD数百枚と買って、毎晩3カ月くらいはあんまり寝ずに、そういう曲をとにかく覚えました。

PCI:ヒップホップ系のが多かったんですね。行くとすぐ譜面が渡されるんですか?
とし:譜面はないんですよ。譜面があったらテレビの映りが悪いってことで、「全部覚えてこい」って言われるんですよ。毎日、「明日は、この曲とこの曲とこの曲やるから覚えてこい」ってな具合で。

PCI:それはハードですね。 
とし:でも、その番組に来るゲストとかは、それこそ「ハーヴィー・ハンコック」「タワー・オブ・パワー」「アース・ウィンド・アンド・ファイアー」「ジェームズ・ブラウン」とか、すごい大物が来るんで、そういう人たちと仕事ができるというのはいい経験でしたし、空気も違い、「こういう空気で仕事をしてるんだな」というのが肌で感じられて面白かったです。 

PCI:ジェームズ・ブラウンなんかが来ると、スタジオの空気が変わるんですか?
とし:まったく変わるんですよ。 みんな「ミスターブラウン」になっちゃうんです。 みんなピリピリして。

PCI:やっぱり存在感があるんですね。
とし:そしたら、グレッグが間違えて最初のカウントを出しちゃったから、 ジェームズ・ブラウンがこっち向いて、にらんでちょっと気まずくなっちゃったんだけど(笑) 面白かったですよ。 

PCI:テレビの仕事の後はどうされたんですか?
とし:テーラー・デインというポップシンガーと知りあいになり、カジノとか、ラスベガスとか、大きな会社のパーティーなんかのディナーショーにも出演する様になりました。 そういう仕事もやりながら、セッションなんかも引き続きやってきました。 

PCI:テレビの仕事によって、フュージョン系のギタリストからもっと活動の幅が広くなったんですね。
とし:そうですね。 スタイルの幅が広がったと思います。

PCI:先日、NAMMショーの後に、ベイクドポテトで、デビッド・ガーフィールドのバンドで弾いてみえるのを聴きに行きました。 その時驚いたのは、「次の曲はとしのフィーチャーだ」とデビッドが突然言いだし、その場で演奏が始まった時です。 あれは特にリハーサルなんかないんですよね。
とし:あの時は「そんなの聞いてないよ〜」ってビックリしました。 困っちゃったんですけど、この曲ならみんな知ってるよな、と思い、ビリー・コブハムの曲をやったんです。

 
左からSaxのラリー・クライマス(カリズマ、マンハッタントランスファー)、Bassのアルマンド・サバルレコ、Keyboardのデイビッド・ガーフィールド(カリズマ、ナタリー・コール)、Drumsのサイモン・フィリップス(TOTO, WHO)そしてToshiさん

PCI:その場でリハなしにあれだけの演奏をするなんてすごいですね。 練習をしたり、リハをやればできるのは当たり前ですけど。
とし:みんな百戦錬磨の人達ばっかりだから、曲だってものすごくたくさん知ってるし。 でもね、あの時僕がやったビリー・コブハムの曲、デビッドは知らなかったんですよ(笑) でもそんなに難しい進行の曲じゃないから彼ぐらいの人はその場ですぐ合わられるのでしょう、すごいですよね。

PCI:メンバーで対話をしながらその場で音楽を作っていくなんて、テクニックがあっても、場数を相当踏んでないとないとできませんよね。 やはり、セシリアを演られたあたりから、いろんな経験されたのが今活きているんでしょうね。
とし:そうだと思います。 先週またデビット・ガーフィールドとジミー・アールとやったんですけど、これも面白かったですよ。 お客に、マイケル・ランドーが来てたんですよ。 マイケルも、僕は大好きなんですけど、その時自分では納得できるプレイができたんで、彼がどう思うか気になったんです。 でもお互いすげー酔っ払ってたから、どうやってうちに帰ってきたのか分からないくらいだったので、彼が何を行ったのかはっきり覚えてないんですけど(笑) でもまた僕にとっては忘れられない夜になりました。 マイケルは今「STOLEN FISH」っていうバンドでよく弾いてますけど、そこのドラムはイズミタニ・マコトっていう僕の友達なんです。  

PCI:「STOLEN FISH」は先日ベイクドポテトで見ました。スキンヘッドのお姉さんカレンの歌と、マイケル・ランドーのギターのからみが印象的でした。マコトさんのドラムもよかったし、彼が英語でMCをやっているのも驚きでした。ベースのクリス・ロイはXOTICの6弦ベースを弾いてました。たいへん良い演奏でした。
とし:マコトは、人間的にマイケルやその他メンバーに大変気に入られたみたいですね。僕たちがあこがれてたミュージシャンと今は一対一で話せる様になったので幸せですね。プレイができるのは当たり前のことで、それプラス、人間と人間の付きあいがこっちでやっていくためには非常に大切な部分だと思うんですよ。 
PCI:それには言葉がしゃべれるということは大切なことですね。
とし:言葉もそうですけど、何か通ずることがあるじゃないですか。カンが合うというか。 なんか「つるもうよ!」ってな感じかな。 そういうのが必要ですよね。

PCI:そうなってくると人種や言葉なんてあまり関係なさそうですね。
とし:関係ないと思います。 

PCI:我々日本人から見たらすごいことに思えるんですけど、こっちにいる人にしてみれば音楽を通じてただ普通に対等に付きあってるだけのことで、別になんでもないことなんでしょうね。 ただ、としさんもマコトさんもこちらではトップ・アーティストに認められているのに、日本では全然知られていないっていうのは少し残念に思えます。
とし:どうなんでしょう? 日本にも立派なミュージシャンで活躍してる人がたくさんいますけど、その人たちのことをロスでは誰も知らないということと同じじゃないでしょうか?

PCI:別にたいしたことじゃないように言われるのが、としさんのすごいとこの様な気がします。 日本人でアメリカに来たいという若い人たちにとって励みになる様に、是非、としさんのことは日本へ紹介したいと思います。今後はどんな活動が主になるんですか?
とし:今まで、誰かのバックとか、誰かの仕事ばっかりだったので、自分の物が全然ないんです。今年は自分の曲を作り、自分のやりたいことを探さないといけないと思ってます。3月からは、毎週火曜日にベイクドポテトで、ボビー・キンボール(Bobby Kimball, ご存知TOTOの元ボーカリスト)のバックで演奏します。3月中旬には ABC放送の「ウェイン・ブレイディー・ショー」というバラエティー番組のバンドで出ますので、うまく行けばまた1シーズン今度は3大ネットワークで流れることになるかもしれません。

PCI:すごいですね。お話をお伺いしてると、こちらでたくさんの友人やネットワークが既にあるので、自分で何か始められても、みなさんから協力してもらえるんじゃないでしょうか? 豪華絢爛なメンバーでレコーディングということも可能ですよね。 
とし:ランドーとルカサーと三人でギターを弾いて、ガーフィールドがピアノとか、ドラムがサイモン・フィリップス、シーラ・イーがパーカッションとか?(笑)

PCI:可能ですよね(笑) でも、一流のミュージシャンだということで、協力してもらうんじゃなくて、同じ仲間としてごく自然に協力してもらえる可能性があるのがすごいですよね。
とし:そうですね。 ただ、あまり彼等の名前を利用して、自分を売り込むっていうのはどうかな?と思ってるんです。やっぱり自分の我をしっかり出して行きたいと思います。 

PCI:応援します。頑張ってください。今日はありがとうございました!!


テレビの「マーティン・ショート・ショウ」をやっている時、ゲストで来ていた
ユリ・ゲラーとのツーショット。 この時目の前で曲げてもらったカギは、
今では家の家宝となっているそうです。

 
 
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